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「ウソつき」



小学校最後の、というか、中学校最初の春休みに
親の再婚を機として遠くの県から転居してきた私は、
あまり社交的でない性格と不安定な精神状態が災いして
中学校に入学してから少しの間友達が出来ずにいた。

ただでさえ多感な、その上今にもまして幼い頃。
そんな風に一どきに様々な出来事が押し寄せて
不安定にならないわけがないその時期を支えてくれたのは、
別居している「お兄ちゃん」だった。
同じく親に振り回された被害者として同情していたのだろう、
兄はいつも親身に、私の味方になってくれた。
そしていつしか、私の心を支えながらも
その不安定さを助長する要因にもなっていた。

絶対に伝えられない想いを私は抱いてしまったから。



そんな毎日の中で気になったのは、時々廊下ですれ違うあの人。



思わず振り向いてしまう程にきれいで、
だけどその人はいつも一人で、どこか物憂げだった。
私もこんな表情をしているのかしらと、
いつしかその人に自分を重ね合わせていた。

その人と初めて言葉を交わしたのは、
2学期の席替えで近くに座る事になり
友達になれた子のお宅にお邪魔した時だった。
偶然にもその子のお姉さんだったのだ。
あまりにも唐突で舞い上がってしまったけれど、
「見てました」なんて言えるはずもなく、普通の初対面を終えた。
何となく恥ずかしくて、妹さんにも何も言えず、
初めて見たような、顔をした。



実技科目も含めて文句なく学年トップの成績だという事。
大人びた、穏やかな性格をしているという事。
先生方からの信頼も厚いという事。
多くの男子に告白されているのに誰とも付き合わない事。

その人についての話を聞くごとに、
こんな人なら兄と釣り合うのだろうとの考えが強くなった。
更に、憧れから、よりその人に同一視するようになっていた私は
その人と兄が付き合うようになればいい、と思うようになった。

だから、2人が同じ学校を目指している事を知った時は運命だと思った。



「ウソつき」

「………。」

「チェリーのウソつき!」

「私がいつウソをついたのかしら」


否定できないから、咄嗟に嘘をついた。


「ウソだったじゃないの。友達っていうのも全部!」

「………。」


これでいいんだ。あとは黙っていよう。
この胸の痛みは親友を裏切り続けた事に対する罰。

そして、この結末は、
こんな私を信頼してくれていた親友への、
せめてもの罪滅ぼしなんだ。
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