From April '08 to March '11
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 お父さんがいないと言う事を除けば、ごく普通の家庭だった。 優しいお母さんと、明るいお姉ちゃん。 とにかく明るいお姉ちゃん。もう明るすぎるお姉ちゃん。 優しくて、時に厳しいお母さんのもとで、僕達はそれなりに良い子に育ったと思う。 特にお姉ちゃんはとても正義感の強い真っ直ぐな人だった。そしてとても明るかった。 「嘘をつく子はお日様に嫌われるのよ。」 悪い事は悪いと教えてくれたお母さんの教育の賜物だったのだろう。 そんな2人に囲まれて、僕は普通に幸せな子ども時代を過ごしてきたのだった。 ところが、ある日。 「…これ、どういう事かな?」 偶然目にする事になったお母さんの戸籍謄本に、僕達姉弟が養子として載っている事が分かった。 それが何を意味するのか、まだ子供である僕達にすぐピンと来るものではなかったけれど…問い質すと、お母さんは突然泣き出した。 母の話した事のあまりの荒唐無稽さに、僕は絶句し、お姉ちゃんは半笑いだった。 「私は、あなたたちを、さらって来たのよ。」 13年間。 「子供が欲しかったの。」 いや、2歳の頃にという母の言葉から導き出すと、11年間か。 これまで言う事為す事全てが正しいと信じていた母の、そして僕達の、驚くべき秘密だった。 母は、どこかから連れ去ってきた僕達を、捨て子だったという事で養子にし、育てていたというのだ。 僕達3人が全くの赤の他人だったと言う真実なんかよりも、母が犯した罪と、何事もないかのように築き上げてきた「ごく普通の家庭」という嘘に対する嫌悪が、大好きだった気持ちと同じ大きさだけ膨らんだ。 僕達はもう、そこに留まる事は出来なかった。 もはや苗字すら分からない、僕とお姉ちゃんの本当の家族はどこにいるんだろう? 夏休み。 母の記憶を頼りに、僕たちは元々住んでいたと思われるさらわれた辺りの漫画喫茶を転々としながら手掛かりを探した。 警察に行けば早かったのかも知れないけれど、そうなれば「母親」は捕まってしまうだろう。 偽りの家族関係だったとは言え、「母親」が僕たちに注いでくれた愛情が本物だった事はよく分かっていたから、それも出来なかった。 僕の前にあの人が現れたのはそんな時の事だった。 「テレビに出たりする事に興味はない?」 なかった。 だけどその時ふと、数日前に漫画喫茶で読んだ昔の漫画を思い出した。 赤ん坊の頃に母に捨てられた子がタレントとして有名になり、本当の母親を見つけ出す。そんな物語。 「うちはまだ立ち上げの段階で、強力なコネクションがある訳じゃないけど。でも何となく、あなたとならうまく行きそうな予感がするの。そうね…決めた。貴方をスターにするわ。」 その決意を事務所の名前にまで込めてくれた。 芸能事務所スターリオ──あまりにもそのままで気恥ずかしくはあったけれど、とにかくここから僕の家族捜しは始まるのだ。 一枚だけじゃなかった。 私や理子のとは別に隠されていた一冊のアルバムには、その子がたくさん写っていた。 まるで、豊平家からいなかった事にされているかのように、奥に仕舞い込まれて。 …いなかった事に… 「いたんだね。こんな所に…」
―理央―。
「豊平理都さん、高一。その妹・理子ちゃん、小4。 理都に、理央に、理子。 ちょっと狙いすぎな気もしなくもないけど、まあ分かりやすいわね。」 交通事故で………今年の2月末に。覚えているでしょ。 あなたのデビュー会見の日よ。…無意味だったのよ、全部。」 「あなたが仕事を頑張ってきたこの半年間の事は完全に無駄足だったの!」 「いもしない両親に見付けて欲しい一心で、話題に無理矢理乗っかってここまで来たのに…」 「美穂里ちゃんが泣く事ないよ。」 「な…泣いてないよ!」 「わざわざ探してくれたんだよね、ありがとう。」 「違う…」 「それなのにこんな事…辛い思いをしたよね、ごめんね。」 「………。行くの?」 「うん」 TVに出るようになってからも何の手がかりもなかったのは、そうか、そうだったのか。 悲しい気持ちはもちろんあったけど、少しほっとした思いもある。 そうか、お父さんとお母さんが、僕の事を忘れてしまっていた訳じゃなかったんだ。 そうだったのか! PR |
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