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「…ダメだ、やっぱり出ない。家に帰ってるなら良いんだけど…」

「友永…今の奴ら」

「栗田さんと柿谷さん。5年生の時、同じクラスだった子達だよ」

「って覚えてるんじゃん!」

「…ちょっと仕返ししただけだよ」

「仕返し?」

「思い出した…って言うか、今ので気付いた。
 あの2人のお陰で僕まで嫌われちゃったんだよ、多分」




 


「その後も青木さんは普通に接してくれてたけど、
 それはきっと…ただ単に僕が無神経だから
 本当は無理してる事に気付けなかったんだろうな」





 


その瞬間に色々な思いが大きく膨らんで、
胃の中で熱い塊になって、喉の奥から噴き出してきそうだった。
思わず駆け出して、途中はもう覚えてないけれど、
気が付いた時には自分の部屋でうずくまっていた。

まるで何事もなかったかのような、あの2人の声と顔が。

頭の中でぐるぐる回って、涙とか嗚咽とか、
色んな物が溢れて止まらなかった。

それから、この5年間の私自身の辛酸と、
あの2人…だけじゃない、あの頃私を苦しめていた皆は
おそらくそんな気持ちを想像だにしていなかったのだという
私にとっては残酷な事実に行き当たった時、
それらに加えて笑いさえ込み上げてきた。

ドアの向こうから妹の声が聞こえる気がするけれど、
それを言葉として解釈する力は残っていない。もう。

何だ、誰にとってもどうでも良い事だったんだ。

私が被害者然として辛い顔を隠した顔をして暮らしていた事を暴かれたみたいで、
悲しくて、寂しくて、苦しくて、悔しくて、恥ずかしくて…私ももう、どうでも良くなって。

ひとしきり吐き出したら、既に真夜中だった。

友永君にもスズにも桜井君にも迷惑掛けたな、
でも別に私の事なんて何とも思ってないんだろうな、
しばらく誰にも会いたくないけれど…
でも優等生の私は時間通りに起きて学校へ行ってしまうんだろう。

誰にも何も言われないように、自分でそう作り上げてしまったから。
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