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それは、小さい頃から転校を繰り返す内に身に付けた、自分の為の特技だった。



僕は誰とでもすぐに仲良くなれる。
その方法はとても簡単だ。
ただ笑って話しかければいい。
話しかけられたら、笑って応えればいい。
顔と名前は1度で覚える。
男子とも女子ともたくさん話す。
話した内容はしっかり覚えておく。
なるべく2人きりにはならない。
そして何より、どんな相手でも好きになる。

誰とでもすぐに仲良くなれて、誰にも嫌われない簡単な方法。



そうして培ってきた友永類は、
実は中身のない空っぽな人間
なのではないかという不安が
浮かび始めたのはつい最近の事だった。

スズと話すと揺さぶられっぱなしで、
自分のペースが保てなくなったからだ。
笑って話しかけても、笑って応えても、
思った通りの反応が返って来なかった。

最初は面白いと思っていただけだったけど、
いつの頃からか、触れられたくない面に触れられて、
知らなかった自分に気付かされるようになった。



僕ってこんな風に慌てるんだ。
僕ってこんな風に怒るんだ。
僕ってこんな風に…人を嫌うんだ。

これまでは、

どんな喜怒哀楽も、人の目を気にして取り繕っていたらしい。
何かしてもらったら必ず喜ぶ。
自分に有利な時しか怒らない。
同情してもらえるようにしか哀しまない。
皆と同じようにだけ楽しむ。そんな風に。

これまでは、

相手の期待通りの自分でいる事で、
相手も期待に応えてくれると思っていたらしい。
相手を好きでいる為に、上辺しか見ていなかったらしい。
もちろん僕も、上辺しか見せていなかったらしい。
僕自身も僕自身の上辺しか知らなかったから。

そんなの、気付かされなければ、
それが本当の僕でいられたのに。



君はどうして踏み込んで来たんだ。

「ほらね、ルイトモ君にも嫌な事くらいあるんだから、
 桃ちゃんにもちゃんと嫌な顔しながら言えばいいんだよ。」

そういう訳にはいかないんだ。
だって、何にでも笑って応えるのが友永類なんだから。
誰にでも好かれる僕には、嫌な事とか、ないんだから。



そんな空っぽさ、僕の嫌な部分、見たくなかった。

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